2016年度私大関連予算案等に対する抗議声明

【声明】

支離滅裂な大学改革を押しつけ、私大を不当に差別する2016年度政府高等教育予算案に強く抗議する


2016年2月3日
日本私立大学教職員組合連合
中央執行委員会

 

1.私立大学等経常費補助「一般補助」の減額・変質
政府は2016年度予算案で、私立大学等経常費補助(以下、私大助成)を前年同額の3,153億円計上した。減額こそ免れたにせよ、その内容は極めて重大である。
第一に、一般補助を10億円減額し、特別補助に移行している点である。一般補助は教職員数・学生数を算定基礎とし、大学の運営に不可欠な教育研究に関わる経常的経費を補助するもので、私大助成制度の根幹をなすものである。しかし政府は「メリハリある配分の強化」方針のもと、長期にわたり一般補助を減額し、特別補助を増額してきた。民主党政権時の2011年度予算でようやく「特別補助から一般補助への組み替え」が行われ、経常費補助に占める一般補助の割合は65.8%から87.6%に改善された。ところが政府は2014年度以降、一般補助から特別補助への移し替えを再開し、2016年度予算案では一般補助の割合を85.7%にまで引き下げている。政府は、私大助成総額を非常に低い水準に抑制しながら、さらに全大学に共通の定量的基準にもとづいて配分する一般補助を削減し、政府が望む「改革」に取り組む大学に重点配分する方向を強化している。これは文科省のいうところの「基盤的経費の確保」とはまったく逆行するものであり、私立大学と学生を蔑ろにし、政策誘導による競争と淘汰を促進する政策にほかならない。
第二に、「私立大学等改革総合支援事業」配分額を大幅に拡大していることである。この「事業」は、政府が2013年度予算で新設した、私大助成を重点配分するための枠組みであり、文科省が提示する「改革」プログラムに沿った取り組みを点数化し、上位の大学を選定して経常費・設備費・施設費を一体的に重点配分するというものである。一般補助については、選定された大学に教員経費・学生経費を10%程度上乗せして配分を行っている。2016年度予算案では、この「事業」による経常費補助の配分額を前年度の144億円から167億円へと大幅に拡大し(23億円増)、そのうち一般補助の上乗せ配分額を95億円、特別補助の上乗せ配分額を72億円に引き上げている。こうした一般補助の重点配分の仕組みは、私大助成制度の理念に明らかに反するものであり、撤廃することを要求する。

2.各大学が実施している授業料減免事業等への不平等な支援
 各私立大学が実施している「経済的に就学困難な学生に対する授業料減免事業」に対する支援は、私大助成の特別補助において措置されているが、2016年度予算案の計上額は86億円(前年比1億円、1.5%増)となっている。減免対象人数はわずか4.5万人で、一人当たり補助額はわずか19.1万円にとどまっている。これに対して、国立大学法人運営費交付金において措置されている予算額は、320億円(前年比13億円、4.0%増)、対象人数は5.9万人で、一人当たり交付額は54.2万円である。私立大学生が全体の8割近くを占めていることに照らせば、私大の対象人数はあまりに少なく、かつ一人当たり補助額もあまりに少額であり、私立大学生が合理性のない不平等な状態に置かれたままとなっている。
予算額があまりに少ないために、私立大学で授業料減免を実施すれば多額の原資が必要となり、各大学の財政余力によって減免対象者数や減免基準が左右され、私大の間でも格差が生じている。学生に何ら責がないにもかかわらず、経済的に困難な学生が不平等に扱われている事態は一刻も早く解消されなければならない。現行の授業料減免事業に対する補助を増額するとともに、経常費補助という補助事業とは別枠で私立大学生授業料減免事業予算を計上し、私立大学の学生が国立大学の学生と同等の水準の授業料減免が受けられるようにすることを強く要求する。

3.遅々として進まない奨学金制度の改善、学費負担の軽減策
日本学生支援機構の奨学金事業に関しては、「有利子から無利子への流れを加速」するとして、無利子奨学金貸与人員を47万4千人(1万4千人増)、有利子奨学金貸与人員を84万4千人(3万3千人減)としている。この方向は一定評価できるが、給付奨学金制度が存在しない現状にあっては、教育の機会均等を保障する最低限の手段として、無利子奨学金を必要とするすべての学生が貸与できるようにするために、可及的速やかに貸与人員を抜本的に拡充するとともに、貸与基準を緩和することを強く要求する。また、私立大学は国立大学に比して無利子奨学金採用枠が小さいために、採用基準を満たしていても採用されない学生が数多く存在している。こうした不合理な格差を解消するためにも、無利子奨学金の貸与人員の拡大、貸与基準の緩和と合わせて、予約採用制度を拡大することを強く要求する。
国際的に見れば、OECD加盟34カ国のうち大学学部生を対象とした給付奨学金制度がない国は日本とアイスランドのみで、大学授業料が有償でかつ給付奨学金制度を有しない国は日本ただ一国である。こうした状況に照らせば、文科省は2012年度予算の概算要求で給付奨学金制度の創設を掲げたにもかかわらず、翌年度より一転して創設要求を見送り続けていることはきわめて重大である。過重な私費負担によって就学困難となっている若者の窮状に鑑みれば、世帯の所得額などの客観的基準のもとで、私立・国公立の区別なく公平に受給できる給付奨学金制度を創設することは急務である。
また、日本は2012年9月、国際人権規約の高等教育の「漸進的無償化」条項に対する留保を撤回したにもかかわらず、それから3年以上が経過してもなお「無償化」に向けた具体的計画をまったく示していない。過重な高等教育費私費負担を軽減するための総合的施策の実施計画を可及的速やかに立案し、具体化することを強く要求する。


以上

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